2006年08月 : 異常な日々の異常な雑記 QLOOKアクセス解析 アクセスランキング

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吉田秋生「吉祥天女」

[ 2006/08/30 ]
天女の末裔とされる叶家の娘で、絶世の美女である小夜子が街に帰ってきたのを機に、小夜子とその財産を狙う遠野家が繰り広げる陰謀、事件を描いた心理ホラー。

お家騒動ものではあるのだが、それ以上に男女の性差というものを深くえぐった快作であるように思う。
女性であるが故に男達から迫害を受けた小夜子のあらゆる形の復讐を描いている。

その妖しい魅力や智謀の冴えなど、小夜子のキャラクター造形が素晴らしい。
その時々で登場人物の誰の視点からのシーンなのかわかりづらい点が多く、焦点をもう少し絞ってほしかったという不満はあるものの、完成度は非常に高い。


「美しいことは罪ですか」なんていうセリフはどこで聴いたのか覚えていないけれど、「好意」というものが時に暴力になりうる、ということを思い出した。
よくよく考えてみると、セクハラや強姦が「好意」に基づくものであるということは自明の理である。
人は楽しいことを共有したがる。
飲み会、サークル、宗教、スポーツ観戦、映画鑑賞その他諸々。
勧誘者の側は好意に溢れている。
だが、勧誘される側は必ずしもそうでない場合もある。
強姦にしても同じことで、よく強姦魔をさして、女をモノ扱いにして、などというけれど、強姦魔はモノを強姦したりはしない。
セックスの快楽を共有したいが為の強姦なのだ。
魅力的な人間はそういった「好意」の暴力に常に晒される。

「好意」の様々な形の顕現とその結末がこの作品には描かれていて、「女の業」が何による業であるか、ということを考えさせられた。


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[ 2006/08/30 ] マンガ | TB(0) | CM(-)

安部公房「第四間氷期」

[ 2006/08/29 ]

現在の価値観で過去を裁くことの是非がたまに論じられるけれども、この作品は現在の価値観で未来が悲観的なものであるか否かを断じることの是非を問うている。

予言機、という正確な未来をはじき出すことの出来る機械をつくった男が体験する数奇な運命を綴った話であるが、話の転がし方が抜群にうまい。

日常の延長としての未来が大状況の未来と絡んでいく展開は類似の作品がにわかに思い浮かばないほど稀有なもの。
一見、なんの関係もないモチーフが次々と現れ、複雑に絡み合い、グロテスクな未来とリンクしていく様子にぐいぐい引き込まれる。

SF的なテーマ、SF的なモチーフを用いつつ、凡百のSF作品にはないシュールな文体と文学的な方法論によって問題意識を掘り下げている。

最近の作家は個々のエピソードや心理描写の積み重ねで話を作る人が多くて、テーマで読ませる人が少なくなってしまったのだけれど、安部公房は隙間をつくようにして、独自で、しかも普遍性を持ったテーマを提示し、シュールなエピソードの積み重ねで話を作り上げている。
すごい作家だなあ。


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[ 2006/08/29 ] 古典・純文学 | TB(0) | CM(-)

徳弘正也「狂四郎2030」

[ 2006/08/26 ]
「ジャングルの王者ターちゃん」の作者の、意外な本格ハードSF。
スーパージャンプ連載で20巻にも及ぶ大作。
「華氏451」、「ガタカ」などのようなディストピア的な未来で展開する過酷なラブストーリー。

「シェイプアップ乱」「ターちゃん」の頃を上回るシモネタを炸裂させておきながら、言葉の本義的な意味でのエロスを描き切り、かつ壮大な設定とテーマを破綻なく読ませる。
回収し切れなかった伏線や迷走している場面もあったけれど、きちんとテーマを提示しきれているように思う。
ベテラン作家でありながら、少年ジャンプ連載時には見えなかった一面をここにきて表に出してこられる、というのはすごい。


ただ、あとがきで作者が言っているように、ラブストーリーのほうに重点を置きすぎていて、そこを鮮明に描きたいが為に犠牲になっている設定がもったいない。
また、作者の優しい視点の現われかもしれないが、恋愛のドロドロした面はあまり見られなかった。
楽天的すぎるほどに「愛」への信仰が描かれており、ヒロインや多数の女性がレイプされまくり、主人公が人をバタバタ切り殺していくにも関わらず、その苦悩があっさりしすぎているのは気になった。
そこまで描写できるにも関わらず、「The World Is Mine」や「デビルマン」のような倫理観を踏み越えていく覚悟が見えない。
特に、最初に固まった友情の成立とその揺るがなさに、設定の過酷さにしては楽天的すぎる人間観の軽さがほの見えて、好きになれなかった。

全体としてはいい作品だとは思うが、設定を生かしきれていないのがなんとも残念。


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[ 2006/08/26 ] マンガ | TB(0) | CM(-)
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