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マイケル・ジャクソンが音楽をつまらなくした

[ 2012/12/18 ]
まあ、この種の言説は今に始まったことじゃないんだけど、改めて。

マイケル・ジャクソンは優れたアーティストだったけれども、そのあり方はミュージシャンとかシンガーとしてよりも、エンターテイナーとして多くの人々に記憶されていると思います。



大抵の人は音楽の良し悪しってその楽曲を一聴しただけではつけることはできません。
注意深く聴いていればその曲が自分に合うかどうかわかるけど、普通の人は日頃それほど注意深く音楽を聴こうとはしていないし、注意深く聴くように意識する機会が少なければ少ないほど、個々の音楽の「個性」を見つけづらくなっていきます。
「似たような曲ばかり」という言葉は昔からよくいわれる罵倒文句だけど、それはそのジャンルの音楽に対する興味関心が薄いから、それぞれの曲の個性を見つけづらくなっているということです。
私だったら演歌やヒップホップは「似たような曲ばかり」になってしまいます。
音楽への興味関心が薄い人が楽曲の個性を理解するには、繰り返しその楽曲を聴くか、音楽以外の要素によって受け手に印象づける必要があります。
もちろん、そんなことしなくても一聴して琴線にふれてしまう楽曲もたくさんありますけどね。

MTV登場以降のポピュラーミュージックシーンは視覚的に訴えかけるプロモーションビデオとセットの音楽が主流になり、日本の場合だと、ケーブルテレビ網がそれほど発達しなかったから、テレビ番組やCMにシンクロしやすい音楽が主流になりました。
これはある意味必然的な流れです。
video killed the radio starです。

ロックミュージックは従来のフォーク、ブルース、クラシック、カントリー、ジャズなどと比して、そのステージングに派手な演出がありました。
チャック・ベリーのダックウォークとかエルヴィス・プレスリーの腰振りとか、ジミヘンがギターを歯で弾いたり、ギターを燃やしたり、というのは音楽そのものとは何ら関係のないものですけど、彼らの音楽を語る上では欠かせないほどに強烈なインパクトとして人々の記憶に残っています。
ピンクフロイドやグラム期のデヴィッド・ボウイ、U2などアルバムコンセプトを具現化した巨大なステージも有名です。
ポピュラーミュージックはそのような形で大衆的な人気を獲得していったのだけれど、ただ、そういうパフォーマンスってわりとすぐに陳腐化してしまうものだし、いずれも高度なものではありませんでした。
ステージセットの豪華さは資金力がなければ実現できるものではないですしね。

マイケル・ジャクソンはその音楽が優れていたのはもちろんなんだけど、彼の存在が革新的だったのはやはり音楽性云々よりもその人間離れしたダンスが大きかったのではないかと思います。
楽器の演奏なんて視覚的には地味なものです。
楽器を破壊するのは誰でもできることです。
でも、洗練されたダンスを踊ることが出来る人は限られているし、それは楽器を弾くよりも視覚的にも映えるものです。
日本で今人気があるのはアイドル系ばかりで、モーニング娘。でもAKB48でもももいろクローバーZでもパフュームでも、ジャニーズ系でも、エグザイルでも、みんなダンスやっています。
アイドルばかりになる以前は小室哲哉プロデュースの楽曲がブームだったんだけど、安室奈美恵やTRFなんかもダンスを重視した楽曲が多かったです。
同じ頃に海外で人気があったのもマドンナとか、スパイスガールズとか、TLCとか、ジャネット・ジャクソンとか、ブリトニー・スピアーズとか、やっぱりダンスやっている連中です。

この流れを決定づけてしまったのはマイケル・ジャクソンです。
マイケル・ジャクソン以前にダンスとボーカルを高度に融合させたパフォーマンスを見せていたのはジェームス・ブラウンやモータウン系のアーティストなどにもいますし、日本でもピンクレディーなんかが派手な振り付けやっていましたが、セールス面でマイケル・ジャクソンの成功は桁外れでしたからね。



バックダンサーと共に踊りながら歌う、というスタイルがメインストリームになったのは彼の存在がなければありえないことだったし、『スリラー』のフォーマットは以後の音楽ビジネスのあらゆる手本となるものでした。

ダンスなんて音楽そのものとは一切関係のない要素ですが、エンターテインメント的にはもはや欠かすことのできないものになってしまった。
そうなることでダンス付きの音楽ばかりがチャートの上位に来るようになってしまったのだけれども、いい加減食傷気味なので、新しいフォーマットで受ける音楽がメインストリームになればいいのに、と。
歌って踊れるアイドルなんかよりもグラビアアイドルのほうが全然かわいいし、歌って踊れるアイドルの楽曲よりも歌えないし踊れもしないキング・クリムゾンの楽曲のほうが全然スゴイだろってことなんですけどね。



まあ、それぞれ別物っちゃあ別物なんだけど、このAKB48と嵐ばかりが売れてる音楽状況はやばすぎるので、誰かなんとかしてくれよ、と。
マイケル・ジャクソンの呪いから誰か開放してくれよ、ということです。

繰り返しますが、私はマイケル・ジャクソンも彼の音楽も大好きです。
「手塚治虫のせいで日本のアニメーターの給与水準が低く抑えられるようになってしまった」
という物言いが、その後の当事者たちが待遇を改善するために戦ってこなかった事実を無視して手塚批判しているのと同じようなものです。
ただ、現状の音楽が少なくとも私にとってつまらなくなった原因を考えていくと、その最初の萌芽はマイケル・ジャクソンの存在にあったのかな、と。
彼の劣化エピゴーネンが蔓延する現状への呪詛ってことです。

関連記事:Michael Jackson『Beat It』を聴こう

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