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呉智英が果たした役割

[ 2013/03/15 ]
呉智英氏は昨年末、宮崎哲弥氏との対談『知的唯仏論』、書き下ろしの『吉本隆明という「共同幻想」』と立て続けに著書を出版しました。
いずれも興味深い内容の本であり、特に後者は戦後の言論空間の欺瞞性を告発する、切れ味鋭い筆鋒を堪能することが出来る力作です。

知的唯仏論 吉本隆明という「共同幻想」

現在の呉智英氏は東京を離れ、いくつか抱えていた雑誌連載も数を減らしたことで、書き下ろし本の量産体制に入ったんでしょうかね。
やはり書き下ろしの『現代人の論語』『つぎはぎ仏教入門』などもわりと最近の著作ですが、80年代末~00年代頭くらいまではほとんど雑誌コラムの再録本ばかりだったという状況に比すれば、氏のまとまった思想が読める、という意味では最近の活動は長年の愛読者としては喜ばしいことかもしれません。
ただ、『封建主義者かく語りき』『バカにつける薬』『サルの正義』『賢者の誘惑』などといった初期の著書に見られたような奇抜な発想、誰も思いつかなかったような社会的提言などは最近ではそれほど見られなくなったように思います。
民主主義へのアンチテーゼとしての封建主義の提唱、死刑を廃止して仇討ち復活、博愛刑制度の創設、水田の国立公園化、都知事になってクーデターなどなど…。
いずれも実現の可能性はともかくとして、既存の価値観、パラダイムを根底から揺さぶるような知見とユーモアに富んだ発想が素晴らしく、党派性に依拠した考察、分析、批評ばかりの他の評論家とは一線を画す氏の言論に魅了されたものです。
加齢の影響なのか、単にスタンスが変わってきたのかはよくわからないけど、頭良さそうなこと書いている、という意味では最近のほうがレベルは上かな、とも思います。
ただ、仏教にしても、論語にしても、吉本論(というよりも知識人論)にしても、テーマとして普遍的ではあっても、現代社会が抱える問題としてはそれほど喫緊の問題ではないし、最前線であるとも言えません。
現代社会で時事的な発言を放つ力、という意味ではそれほど刺激的なことを言えなくなっているんじゃないか、というようなことを思ったきっかけは2011年の竹熊健太郎氏のツイッターでの発言でした。




そのデビュー時からテレビを見ないということも公言していたので、これもそれほど驚くに値しない現象ではあるのだけれども、でも「評論家」という職業がネットを無視して世の中を語ってもいいものだろうか、というのはちょっとひっかかります。
テレビを見ないのはまあ、いいと思うんですよ。
テレビで得られる情報って、芸能ネタとニュースだけど、芸能ネタなんて社会の仕組みそのものに影響を及ぼす類の情報ではないので、とりたてて重要な要素じゃないし、ニュースだったら新聞やラジオで十分足ります。
あとはドキュメンタリーくらいか。
まあ、見なくても困りゃしないですね。

でもネットって、我々の社会を良くも悪くもいろいろと変えましたよね。
PC、インターネットがなければ発生しなかったであろう事件がニュースにならない日ってどれくらいあるだろう、と考えた時、その中身を知らずに、新聞の字面だけで知った事実で何を語れるのだろうか、と。
中東ではフェイスブックが元で革命が起こったりなんかしてますからね。
そういうインフラの内実を知らずして世の中を語ることは難しくなっているんじゃないか、呉智英氏は評論家としてはすでにセミリタイア状態ではないのか、ということも考えられます。
これから新たに影響力を増していくようなことも難しいんじゃないか、ということでそろそろ氏の果たした役割、みたいなのを総括して考えてみようかな、と。
wikipedia読んだほうが早い、という話もあったりしますが、一応考察込みで書くので。
なんか追悼文みたいだけど、長生きしてほしいとは思っていますよ(笑)。



前置きが長くなったけど、彼の業績で重要なのは封建主義の提唱と、マンガ評論の確立の二本柱ですね。
他にも事績はいろいろあるけど、特筆すべきほどの業績はこの2つだと思います。

呉智英氏以前にもマンガ評論やっていた人は何人もいるけど、それ以前の評論家って、呉智英氏の登場以降、引用言及されるケースはほとんどなくなってしまいました。
今のマンガ研究の流れを決定づけたうちの1人、と言っていいでしょうね。
『現代マンガの全体像』はその分野における基礎文献化して、以後、夏目房之介氏、大塚英志氏、岡田斗司夫氏、伊藤剛氏、竹熊健太郎氏などなど、業界内でも派閥横断的に頻繁に引用言及されるようになり、以後のマンガ評論、ひいてはオタク文化評論の嚆矢になったと言っても過言ではないと思います。
ただまあ、別に彼が登場しなくても、マンガ評論をやる人はいくらでも出てきたでしょうけどね。
今のネット状況を見れば、いくらでもマンガ評論はゴロゴロしているし。
いや、先駆者である、ということはそれだけで偉大なことだし、後続への道を作った、という意味でも過小評価されていい話ではないですけどね。
しかし、マンガ評論でも、最近のマンガにはついていけなくなってきている、ということも吐露されていたりして、ここでも時代に取り残されている感は強いです。
マンガじゃないけど、宮崎哲弥氏との対談『知的唯仏論』ではいまだに『エヴァンゲリオン』は見ていない、とも語っていましたね。

で、やっぱり一番重要なのは「封建主義」という概念を打ち出したことですね。
『封建主義、その論理と情熱』('81年。後に『封建主義者かく語りき』と改題)で提唱した思想ですが、実は当時から現在に至るまで、わりと与太話のような扱いで、シリアスに受け止められたことはないし、学術的、論壇的な検証対象、批判対象としてまともに取り上げられたことも一度もなかったりするんですが、これはそろそろ誰かが真面目に検証しなければならない仕事なのではないかと思います。
呉智英氏の影響を受けた評論家ってけっこう名の売れた人達の中にも多数います。
浅羽通明、大月隆寛、宮崎哲弥、小谷野敦、小林よしのりの各氏あたりがよく関係を取り沙汰される名前だけど、山形浩生氏や唐沢俊一氏、宇野常寛氏あたりも好意的に名前を出したりしていますね。
西部邁氏なんかも高く評価している。
政治家だと、みんなの党の柿沢未途氏は呉智英氏の私塾『以費塾』出身で日本唯一(世界でも唯一だろう)の封建主義議員とされています。
意外な所ではTMネットワークの作詞を多数手がけている小室みつ子氏が尊敬する人物の1人として名前を挙げていたりします。
彼女のHPのプロフィール
ツイッターでの言及
他に挙げられているのは文学者や映画監督、ミュージシャンばかりなのに…。
TMネットワークの歌詞に封建主義思想が反映されていたり…はしないですね(笑)

そんな感じで弟子とも言える文化人も多数いるんだけど、その弟子筋の人達も別に封建主義思想を広めていくような活動を行なっているわけではないんですよね。
でも、恐らく彼らが呉智英氏に惹かれたのは、この世界の普遍性を獲得してしまったヨーロッパ近代の思想潮流を根底から否定する思想的根拠足りえる「封建主義」というイデオロギー体系を、呉智英氏がほとんど1人で創造したから。
実効性とか実現可能性とかはともかくとして、(事実上の)公理に対して、自前のイデオロギーを以って対峙できたただ一人の知識人ではないかな、と。
私が氏の思想にはどっぷりはまっていた頃は
「民主主義だってローマの共和制が滅んだ後は、フランス革命まで有効なイデオロギーとして機能していなかった。しかし"近代民主主義"として復活したのだから"近代封建主義"とでも呼ぶべきものが理想の政体として復活することもありえるのではないか」
ということも夢想していたものです。

浅羽氏なんかは「以費塾」を運営していたくらい繋がりが深いんだから、そろそろ封建主義で一本何か書いてほしいです。
最近の著書『時間ループ物語論』では現在を「成長しない時代」と位置づけ、その中で幸福に生きていくにはどうすればいいのか、みたいなこぢんまりした話に終始していて、つまらなかったですね。
時代に寄り添うのではなく、時代と対峙するような言説を構築することもできるはずなのに。
知名度で言えば、宮崎哲弥氏がもっともよく知られているだろうけど、彼は呉智英氏を「ただ1人の師匠」と呼んでいる割には、仏教者で、思想的にはまた違うところにいたりするのでそれほど期待はできないけど、仏教者から見た儒教、封建主義、という視点を提供することもできるはずです。
そういった形で呉智英の思想を検証する、という話がそろそろ出てきてもいいんじゃないかな、と。
ネットを渉猟していると、呉智英批判もそれなりに見かけるけど、わりと枝葉の議論ばかりで、本質に切り込んだ批評ってそれほど見当たりませんからね。
さすがに恥ずかしくって誰も封建主義をまともに相手しようという気にはならないのかな(笑)。

まあ、それはともかく、このように多くの知識人に影響を与えた、ということは当然、現今の世の中にも少なからず影響を与えているわけで、触れておかなければならないのは、やはりネトウヨへの影響でしょうかね。
初期『ゴーマニズム宣言』のブレーンを務めていたのは有名な話で、ネトウヨを準備した、という意味でこのマンガは避けて通れないと思います。
『ゴーマニズム宣言』が明確に右傾化しだした頃には距離を置いていたようだし、差別の肯定、支那呼称の使用などは、恐らく、呉智英氏の本意とは必ずしも合致した形で広まったわけではないと思うし、むしろ、呉智英氏は天皇制を否定しているので保守でもないのだけれども、それでも、ネトウヨ跋扈の責任の一端は帰せざるを得ないかな、と思います。

ネトウヨ的な言説にも真実の一端はあるのだろうけど、それが暴走して、ヘイトスピーチや弱者への罵倒へと転化していく様を見るのは、呉智英ファンとしてはやるせない想いを抱かざるを得ないですね。
そこら辺の話を総括できるのか、という意味ではまだまだ呉智英氏にもやらなきゃならない仕事はあるように思いますが、ネットやってないですからねえ……。
まあ、末端のバカどもなんて右でも左でも、どんな宗教でも、暴走してしまうのが常なので、そういう連中を思想的な意味で批判してもしょうがないし、あるいは思想運動「のようなもの」がこの日本で盛り上がったという点では逆に評価してもいいのかもしれませんね。
思想と政治、現実社会との整合性をどのようにとるのか、という点で、私はネトウヨを唾棄していますが、右にも左にも頑張って欲しいとは思っていますから。

というわけでかなり肩入れした文章になってしまったけど、呉智英氏に関して再評価、というかきちんとした位置づけはいろんな人がやってもいいんじゃないかと思います。
それくらいの価値はあるんじゃないかと。
丸山真男に匹敵する…かはわからないけど、吉本隆明よりは後々まで影響が残る思想家じゃないかな、と思っています。
まあ、思想家、評論家の評価なんて今の時代に云々することにどれだけの意味があるのか、よくわからないですけどね。

追記:呉智英botを作成してみました。封建主義を世に拡めましょう(笑)
https://twitter.com/gotieibot

封建主義者かく語りき (双葉文庫) バカにつける薬 (双葉文庫) サルの正義 (双葉文庫) 現代マンガの全体像 (双葉文庫―POCHE FUTABA) 危険な思想家 (双葉文庫) 賢者の誘惑 (双葉文庫) つぎはぎ仏教入門 時間ループ物語論
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