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『惑星のさみだれ』(水上悟志)

[ 2010/12/05 ]
ヤングキングアワーズでつい最近まで連載していたセカイ系マンガ。
ある日、目が覚めると言葉をしゃべるトカゲから、「お前は世界を救う騎士なのだ」と告げられた青年が、同じような境遇に巻き込まれた仲間と共に、戦いながら成長していく物語。

序盤の、いわばつかみのところで語られる、セカイ系で中二病ファンタジーな設定に対する自覚の有り様が他の類似の作品と比して独特なところが面白かった。
そのおかげで、クセのある、というよりはちょっと恥ずかしい設定の作品世界にわりとすんなり入っていけた。
強度の強い、つまり多角的な読みが可能な作品というわけではないのだけれども、エピソードの積み上げ方がスピーディーで、ストレスなく読み進められた。
ただ、個々のエピソードの演出自体はともかくとして、物語の流れを寸断するかのように入ってくる回想シーンを含めて、構成力は難があるかもしれない。

セカイ系作品である以上、主人公の成長物語であると同時に、自意識の救済物語でもあるわけだが、象徴的な人物たちの死、ライバルの登場、仲間たちとの絆、恋愛、トラウマの克服、いくつかの挫折、とオーソドックスなエピソードの積み重ねで成長、救済される主人公に比して、ヒロインの自意識と、その救済の有り様にはいささか描写不足を感じた。
ヒロインの出自や目的は常軌を逸しているのだが、そのこと自体はともかくとして、それを支える演出や描写が明らかに不足していた。
主人公と出会ったことで、ヒロインはほとんど抱えている問題からその時点で救われていると言ってもいいはずなのに、そのことに気づけない、ということが果たして物語の進行上の問題以外にあったのか、というのが疑問だったりする。
物語開始当初から示唆されていたけれども、ラスト前の展開はたしかにひねったな、という印象を与えてくれるし、カタルシスもあるのだが、ヒロインがとった行動の動機付けには苦しい物を感じてしまった。
それだったら単純にもっと狂った人間にしておけばよかったのに・・・。
というのは個人的な不満でしかないのかもしれないけれども、ストーリーラインの面白さが目立っただけにもっと突っ込んだ描写をしておけば作品の質をあげられたかもしれない、と思った。

他にも明かされていない謎の多さや、超常能力の設定の詰めの甘さなど、バランスの悪さの目立つ作品ではあったけれども、物語内で提示される「成長」のあり方に対する考え方と、それに合わせたストーリーラインはうまくはまっていたように思う。
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