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『Steins:Gate(シュタインズゲート)』(5pb&ニトロプラス)

[ 2010/11/10 ]

昨年、X-BOX360で発売されるや、その方面で大絶賛されたタイムトラベルを扱ったノベルゲーム。
今年になってWindows版が発売されたので、手をつけた。

この手のノベルゲームの中ではシステム回りが厄介で、フラグ管理がかなりめんどくさく、強制終了などのバグもあって、とても快適なプレイ環境とは言えなかったが、それをのぞけば素晴らしい作品だった。

傑作とされているノベルゲームは18禁ものに限らず、SFを扱った作品、それもタイムリープ(記憶のみ時間をさかのぼって、過去をやり直すこと)を扱った作品に多く集中している。
『CROSS†CHANNEL』、『EVER17』、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』、『マブラヴ オルタネイティヴ』などが、一応、SF的な設定でタイムリープをする作品だが、その他のふしぎな力でタイム・リープする作品を含めれば、その数はぐっと増える。
何度もストーリーを周回する、というノベルゲームの特色に合致しているからだろうけど、それにしても少し食傷気味だった。
この作品を始めた時も、またか、という印象はたしかにあったのだけど、細部までかなり現実に似せた世界観であること、現実社会で実際にあった事象、モチーフが作中でかなり重要な役割を果たすこと、タイムリープ、タイムトラベルに関する劇中設定がオリジナリティに富んでいたことで、そういった懸念は払拭された。

中二病患者(邪気眼)の主人公の「電波」が素晴らしい。
SF、ファンタジーの世界を扱った作品で、「現実的な身体感覚や言語感覚と乖離した様式やスタイル」を過剰に演出したものは中二病的設定、と蔑まれているわけだが、伊集院光の命名(彼が想定したものとは違うものになってしまったが)以来、ネットスラングとしてかなり定着した。
中でも現実の自分にファンタジー設定を適用してしまう人はかなりイタイ。
邪気眼中二病というらしい。

平井和正が『幻魔大戦』で「光の戦士」を描いて以来、現実にも「前世では地球を守る戦士だった」とか寝言を言う「戦士症候群」を患った少年少女が続々と発生していたので、別に、そういったメンタリティの人々が最近になって急に発生してきたわけではないんだろうけれど、「中二病」という言葉があまりにも定着したためか、そういう人たちを取り上げる作品が近年わりと視界に入るようになってきた。
田中ロミオによるライトノベル『AURA~魔竜院光牙最後の戦い』でも邪気眼中二病患者の話が出てきていたし、今、何かと話題になっている『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』でも邪気眼中二病を患った少女が出てくる。
で、今作では一人称を語る主人公自身が邪気眼中二病患者だった。
物語はそれがどんなジャンルであろうと、最前線のものは時代を写す鏡、という側面を持っている。
オタク、わけても中二病患者なんてのは自意識過剰な人間ばかりだから、そういう人たちをターゲットにしたジャンルにおいて、中二病自体を自虐的にネタにするのは、言ってみれば必然なのだろうけど、そういったメンタリティが実際に浮き彫りになり、ネタにされ尽くしてしまえば、いずれは現実にもそういったメンタリティは衰退していくだろう。
そうすると、次に出てくるのはどんな問題を持ったメンタリティなのだろうか、とふと疑問に思った。
バンダナ巻いてウエストポーチとリュックを装備、というスタイルが激減したあとも、オタク達は相変わらず、ダサいカッコウをしているので、これからもメンタリティ自体はイタイままなのだろうけど、次に来るものを想像してみるのも面白い。

それはともかく、そういった現代のもっともイタイ部類のオタクの心象風景、ネットコミュニティにおいて醸成される空気をこれほどヴィヴィッドに活写した上で、きっちりと理論設定(ひどいところもあったが)を構築し、照れずに感動できるストーリーをつくりあげたことは驚異に値する。
ご都合主義的なところが多々あったとしても、これだけ濃いものを出してくれたら言うことはない。
資料的価値はともかくとして、時代性が濃すぎて娯楽作品としては後に残りにくい作品だと思うが、逆に言えば、「今」にとってこれほど幸福な作品はないだろう。
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