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『マブラヴ』『マブラヴ オルタネイティヴ』(アージュ)

[ 2010/11/04 ]
マブラヴ(全年齢版)

『君が望む永遠』と同じアージュがリリースした18禁ヴィジュアルノベルゲーム。
『マブラヴ』は2003年、『マブラヴオルタネイティヴ』は2006年に出た作品だが、いずれも単体では語れないので、まとめて。
2タイトルだけれども、内容はそれぞれエクストラ編、アンリミテッド編、オルタネイティヴ編、と三つに分かれており、いずれも2001年10月22日からスタートするパラレルワールドを舞台にしている。

エクストラ編は『君が望む永遠』と同じ街、高校を舞台にしたドタバタラブコメディで、主人公が幼なじみをはじめ、いろんな女の子にモテモテな日常を描いている。
そのなかでいろいろとドラマもあり、丁寧に描いてはいるのだが、これ単体ではなんだかんだいっても凡庸なストーリーとしかいいようがない。
しかし、このエクストラ編に登場する主人公が以後の二編において、幸せな日常の記憶を保持したまま時間移動、平行世界移動することになる。
また、その後の二編とまったく異なる世界でありながら、いくつもの伏線が散りばめられている。
この、「主題を語るための土台」をすべてプレイするのに、20時間くらいはかかった。

アンリミテッド編は、エクストラ編のストーリーが本格的に動き出した10月22日からスタートする。
目が覚めると人類が宇宙外来種との絶望的な戦いを続ける世界で、自らもわけのわからないまま、地球を守る兵士として生きていく。

オルタネイティヴ編は、アンリミテッド編のスタート時に、主人公がアンリミテッド編で得た知識を持ったままタイムリープし、人類滅亡のシナリオを改変するために、悲壮な決意で戦い抜く。


大まかなラインはこうなるのだが、『新世紀エヴァンゲリオン』以来、90年代半ばから10年ほど、マンガ、アニメ、ゲーム、ラノベ業界を席巻した、一群のセカイ系作品の集大成、最高峰とでもいうべき作品だった。
ともすれば「厨二病」のそしりを受けがちな話ではあるけれども、細部の設定を練り上げたその強度の高い物語性と、この分野では突出した演出力はプレイする側を考えさせたり、欝にさせたり、泣かせたり、燃えさせたり、と様々な情動を喚起させる。
『ガンパレード』シリーズや『幻魔大戦』といった類似テーマの先行作も、設定がかなり膨大な大作であったが、それらをも上回る、壮大なストーリーと鬱展開、様々なガジェットは見事というほかない。
特にこの手のゲームで、擬似的なものであるにせよ三島由紀夫的なナショナリズムを描いたことは印象深い。
二・二六事件をモデルにしたと思しきエピソードにはいろんな意味で良くも悪くも目をみはった。
日本のナショナリズムは諸外国のナショナリズムと比較して、やや特殊な形で結実しているのだけれど、ライターが自覚してるか否かはともかくとして、その例をこのような形で提示されるとは思いもよらなかった。
二・二六事件を引き起こした人たちは稚拙だが、その稚拙さが何だったのかを総括できない日本の右翼の有り様を考えずにいられない。
あと、それら個々のエピソード、設定はともかくとして、作中の物理理論に関してはいささか物足りなさを感じた。
もう少し「納得力」が欲しい。

また、キャラクター達にふりかかる運命の過酷さは、この手の作品の中でも突出しており、前作『君が望む永遠』では死を描かなくとも号泣必至のストーリー展開だったのだが、今回は「それ」を描くことにより、破壊力が増した。
今作もイライラするような主人公の独白、ヘタレぶりは健在であるが、個々のエピソードの積み上げ方は絶妙であり、ライターの実力の高さがうかがえる。
美しいものが消え行く様がさらに美しい・・・。
自己犠牲の尊さを知っているのは、別に日本人だけではないけれども、それを美学にまで昇華してしまったのは日本人だけだ。
描写に冗長さが見られたとはいえ、覚悟と信念を持った人たちの身の処し方は慄然とするものがあった。

それにしても、『最果てのイマ』を論じたときにも思ったことだが、これだけ密度の高い作品であるにも関わらず、全年齢版が出ているとはいえ、18禁ゲームであるというだけで、一般的な認知には程遠い、という現実はもったいない。
もちろん、アカデミックな場所でこれが語られることもない。
まあ、数十年後もこの作品を覚えている人がいれば、状況も変わるのだろう。
それくらいの強度がなければ、一般的な意味で名作とは言えないのかもしれない。
ゲームで物語を語る、ということが認知されるまでにはまだ時間がかかりそうだ。


関連記事:日本のナショナリズムが世界を変える可能性
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