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『日本書紀』(舎人親王・編)

[ 2009/08/03 ]

日本最古の歴史書。
成立は古事記の方が8年早いのだが、ほぼ同時期に編纂されたとみなしてよいだろう。
神代の国生み神話から持統天皇の譲位までの期間を綴った書物。
淡々とした記述が続くので、文章の面白みはない。

神話部分に限って言えば古事記のほうがより詳細で、様々なエピソードが挿入されているので、それほど新味には感じなかった。
その神話部分だが、古事記を読んだときにも感じたことだが、ギリシャ神話との相似を思わずにいられない。
神と人間の非常に近しい関係が描写されている。
ただ、固有名詞の難解さから、読解は困難を極めた。

とにかく困ったのは人物の固有名詞で、宇摩志阿斯詞備比古遲神(うましあしかびひこぢ)とか、神日本磐余彦尊(かんやまといわれひこのみこと)とか、彦波瀲武鸕鶿草葺不合命(ひこなぎさたけうがやふきあえずのみこと)とか、倭迹迹日百襲媛命(やまとととひももそひめのみこと)とか、復活の呪文みたいな名前ばかりで、覚えられやしない。
でも、古代の日本ではそれが普通に人の名前であったことを考えると、現代との隔絶を感じざるを得ない。
戦後、GHQの指示による教育改革時に正字正かなが廃され、現代のような言葉づかいが生まれたときにも国語の断絶というのは起こったのだろうけど、その比ではない。
いったい、古代の日本人はどのような言葉を話していたのだろうか。

面白いエピソードはいくつもあったが、特に印象に残っているのは倭迹迹日百襲媛命が女性器に箸が刺さって死んでしまった話や(箸墓古墳の由来)雄略天皇、武烈天皇の暴君ぶり(妊婦の腹を割いて胎児を見たり)あたりなど。
ここら辺のエピソードは日本書紀に持っていたイメージをひっくり返されるほどに驚きだった。

推古天皇以降の記述は学校で教える日本史にもよく出てくるし、小説や漫画の題材にもなっているので親しみやすかった。
朝鮮半島との関わりは14代仲哀天皇の頃(西暦200年頃とされている)からで、神功皇后の遠征のくだりなどは興味深かったが、以後の本書には新羅、百済、任那などが多く出てきており、渡来人の帰化の記述も多いことから、いかに日本の国が形作られる際に、朝鮮半島の影響が強かったかを認識させられた。
ただ、朝鮮半島から侵略を受けたことはなかったようなので、国力としては日本のほうが強かったのだろうが。
朝鮮、というよりは朝鮮経由の中華文明なのだろうなあ。
中国に関してはやはり推古以降の登場で、日本との関わりは朝鮮ほどではなかったことが伺われた。
また、東南アジアの国々とも交易を交わしていたくだりも見られ、認識を改めることになった。

他に印象に残った点としては、天文の記述が以外に詳細に記述されていたことか。
何年何月何日にほうき星が現れたとか、日蝕が起こったとかが出ていて、このことから古代の事象の年代推定の手がかりにしていったことが伺われた。

日本書紀を読もうと思った契機は神道の源流を見たい、という思いからだったわけだが、神代の記述部分については神道でもキリスト教における「聖書」的な扱いを受けたのだろうが、やはり聖書やコーラン、論語、仏典のような「マニュアル」的な色彩は薄かった。
他の世界宗教のように、神道は誰か一個人が始めたものではないから、そのようなものが成立する契機がなかったのかもしれないが、これだけでは神道をわかった気にはなれんなあ。

ただ、日本という国を考える際、やはりこの本は絶対に避けられない書であることだけは間違いない。
にもかかわらず、ここに書かれているエピソードが、一般教養としてどれだけ日本人に共有されているか、というと心もとないものがある。
今の日本では日本神話より、ギリシャ神話のほうがより人口に膾炙しているだろう。
ゼウスのほうがアマテラスオオミカミより覚えやすい名前だし、聖闘士星矢とかあるわけだし。
青年向けマンガでは日本神話を基にしたものもいくつかあるけれども、やっぱり少年マンガで日本神話をあつかわなきゃだめだ。
天智天皇や天武天皇(火の鳥太陽編)やヤマトタケル(火の鳥ヤマト編)、神功皇后などをマンガ化して、ぜひとも子供のうちから日本の古代史に興味を持たしたいところだなあ。
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