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『わにとかげぎす』(古谷実)

[ 2007/08/30 ]

『ヒミズ』以降、ギャグから離れてしまい、人間の暗黒部分を探る作品を立て続けに発表してきた作者の最新作。
孤独な夜間警備員が自分を変えようと奮起する作品。
今作ではややギャグへの回帰が見られた。

『ヒミズ』は2000年代初頭を代表する稀有な傑作だったと思うが、『シガテラ』はやや消化不良な印象が強く、見えてくる景色が不鮮明なままに終わった感が強かった。
この作品も30代の警備員を主人公にしつつも基本フォーマット自体は変わっていないように思う。
主人公を好きになる女性も若くて巨乳でかわいい、というラインははずしていない。
『罪と罰』の昔から定番といえば定番なんだけど、最近は、『め~てるの気持ち』とか、『NHKにようこそ』とか、そういう傾向の作品が頻繁に見られるようになったと思う。
だめ女がいい男に救われる作品もあるんだけど、どうも文芸的な評価は受けないな、そういえば。

でまあ、この作品はそこまでどん底でもない主人公だったし、物語の中盤で得たささやかな幸福の意味と、ラストまでつきることのない、危機の予兆のバランスに読み手がどこまで入れるか、というのが肝なわけだが、やはり『ヒミズ』クラスの作品のあとでは、もう、これに満足することはできなくなってしまう。
単純にストーリーテラーとしての腕前は素晴らしいんだけど、そろそろ趣向を変えて欲しい。
これでもそこそこ楽しめたから、文句を言っちゃあいかんのかもしれんがなあ。
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