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『イワンのばか』(レフ・トルストイ)

[ 2007/04/23 ]

民話を原作とした短編集。
いずれもキリスト教的倫理観をロシア的な道徳解釈に味付けした展開の作品で、寓意に満ちた描写が印象に残った。
収録された八作品はいずれも珠玉と言っていい出来で、不思議な読後感を味わうことができた。

なかでもタイトル作の『イワンのばかとふたりの兄弟』は一般にもよく知られていて、筋肉少女帯の代表曲にもなっている有名な作品。
『三匹の子豚』形式の兄弟の身の処し方を描いた作品であるのだが、「イワンの妻は考えに考えた。彼女もやはりばかであった」という一節に代表されるような愚直であることをユーモラスに描く手腕が絶品。

他にも『洗礼の子』、『人にはどれほどの土地がいるか』などの作品は印象に残ったが、いずれの作品も愚直な労農的生き方を教訓的に描いた作品で、手管はいろいろ尽くしているものの、これだけ並べられるとちと教条的に感じないでもなかった。
ただ、その中でも『悔い改むる罪人』という掌編は小利口なとんちが光る鋭い作品で、鮮烈だった。
聖書に登場する人物たちが天国の門番をしているのだが、その門番たちに立ち向かう罪人の姿が印象的だ。
ここではキリスト教が根源的に抱える矛盾を見事に抉り出している。
この矛盾が結局のところユダヤ教がいくつもの宗派に分派して言った原因なのだろうけど、親鸞的な開き直りが結局は最強ということなんだろうか。
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