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坂口尚『石の花』

[ 2007/02/11 ]
ナチスドイツの侵攻にさらされたユーゴスラビアのパルチザンやスパイの暗躍、強制収容所の悲劇等を描いた戦争マンガ。
連載が1983~86年なので、冷戦崩壊後の紛争で国際的にユーゴが注目を集める以前にこのような作品が描かれていたのには驚いた。

掲載誌である「コミックトム」は創価学会系の出版社の雑誌だが、後に、同じくここで連載していた安彦良和『虹色のトロツキー』と非常に近い印象を持った。
日中戦争前後の満州を舞台にして、日本人、漢族、満州人、蒙古人、朝鮮人と多数の民族に揉まれ、戦争の脅威にさらされながら理想を貫くウムボルトと本作の主人公クリロはよく似ている。
坂口も安彦もアニメーター出身で、卓抜したデッサン力、シャープな描き込みによって描かれる密度の高い物語、という点でも両作品は共通している。
何か意味があるのだろうか。


世界的に、あるいは日本でもメジャーなところでヒットしたことはないが、ユーゴスラビアを舞台にした、あるいはモデルにした作品にはときに名作が現れる。
この作品はもちろん、カンヌでグランプリをとった大傑作『アンダーグラウンド』やゲーム『タクティクスオウガ』など。
7つの隣国、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字により構成される1つの国という、世界の縮図とでもいうべき状況が現出するユーゴに、様々なドラマを見出すことができるからだろう。
そういや、クリロは『タクティクスオウガ』のCルートデニムにも似ていた。

ラストはやや説教くささも感じるが、王道的な主人公を用いてあの複雑な世界を描ききった、というだけでも評価に値する。
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