『虚無回廊』(小松左京) : 異常な日々の異常な雑記 QLOOKアクセス解析 アクセスランキング

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『虚無回廊』(小松左京)

[ 2011/06/15 ]

1988年から執筆がスタートし、91年に中断したまま、今に到るまで未完状態の長編ハードSF。
この作品が中断した後、小松左京は本格的な小説を書かなくなってしまった。
彼の長編小説はほぼ読了済みだが、この作品だけは完結してから一気に読もうと思い、10年以上お預け状態になっていた。
しかし、昨今の小松左京の動静をみるにつけ、完結はもう無理だな、と見切ったので読んでしまった。

地球から5.8光年離れた宇宙空間に突如出現した、長さ2光年、直径1.2光年という途方も無いスケールの人工天体とコンタクトするために、人類が選んだ手段は「AE(人工実存)」と呼ばれる新たな概念のもとに製作されたロボットに人間(遠藤秀夫)の意識を転写して、数十年の宇宙旅行をさせる、というものだった。
しかし、オリジナルの遠藤が地上で寿命を迎えると、宇宙を旅する「AE」は地球との交信を切って、独断による探査に踏み込んでいった・・・。

『果しなき流れの果に』『神への長い道』『ゴルディアスの結び目』『彼方へ』『結晶星団』などといったこれまで小松左京が描いてきた宇宙SFの総決算的な位置づけになっているのと同時に、『2001年宇宙の旅』や『未知との遭遇』など古典SFを包括するような大きなテーマを扱っている。
また、サイバーパンクのモチーフに使われるようなヴァーチャル空間の描写もあり、SFの歴史を総ざらいするような作品となっていた。

小松作品はSFとしての構造がとても精緻に練り上げられているにも関わらず、それがわかりやすい描写で描かれる。
この作品では化学、理論物理学、天文学、情報理論、生物学、コミュニケーション学、哲学、言語学、発達心理学、宇宙工学・・・etcという幅広い分野の学問体系を参照しながら、さらにその発展形としての科学仮説を非常に魅力的に描いている。
まず、そのことがSFファンとしての興味をそそった。
ここらへんのセンスはスタニスワフ・レムの『惑星ソラリス』や『虚数』にも通じるものがあり、「フィクションの中でアカデミックな仮説を楽しむ」ことの醍醐味を存分に味わうことができた。
こういうことをやってくれる作品は、実はSFの中でもそれほど多く無い。

また、化学をモチーフにしたSFも実は多く無い。
いわゆる学校の理科で習う科学分野のうち、物理や生物などは多くのSFで作品世界の設定としてよく使われる。
タイムトラベルものや宇宙もの、パラレルワールドを扱った作品に物理の知識は必要だし、ウイルスパニックや生命進化、異種間接触を描いたものも生物の知識が必要だ。
物理や生物ほどではないけど、地学にもやはり小松左京の『日本沈没』があるし、地底探検ものも古典SFや古生代を舞台にした作品にはよく出てくる。
しかし、化学をベースにしたSFってそれほどない。
アシモフが化学をネタにした作品を出している、というのはちょいと調べたら出てきたけど、それにしても少ない。
なので、この作品にはこの作品でしか味わえない知的興奮が凄まじい密度で詰まっている。

物語の類型としてはダンテの『神曲』やゲーテの『ファウスト』とだぶってくるのだが、ただ、物語としての完成度は実はそれほど高くないかもしれない。
でもSFとしての完成度、という意味では屈指の作品と言っていいだろう。

特に、2巻以降では知性の進化の可能性を描くことに重点が置かれている。
地球人類とは異なる発生、進化を遂げた生命がどのような知性を獲得していったか、という設定と、そういった存在と地球人類、あるいはそういった存在同士がどのようにしてコミュニケーションを取ればいいのか、ということが執拗に描かれている。
そういった設定、描写から浮かび上がってくる、知性や生命の意味だったり物理法則の普遍性だったりというのが実に面白い。

知的エンターテインメントの最高峰であり、未完であることによってまともな評価から置き去りにされていることが実にもったいない。
そりゃたしかに「続き」は気になる。
でもここで描かれた知的達成は物語としての完成度や未完であることの欠点を補ってあまりある興奮をもたらしてくれた。
それは端的に言ってしまえば「視野が広がること」なのだが、物語を読んで、ここまで明確に視野が広がることってそうそうない。
本当に素晴らしい読書体験だった。
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