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『めだかボックス』(西尾維新・睦月あきら)

[ 2012/01/31 ]


化物語シリーズをはじめとして、恐らくラノベ作家としては最も注目度の高い西尾維新原作でジャンプ連載中の人気マンガ。
最新の13巻まで読んだ。
容姿、身体能力、性格など、あらゆる面で「完璧」な女子高校生が生徒会長となって、生徒たちの悩みを解決していく、という話のはずだったのだけれども、ジャンプのお約束と言うか、やはりバトルマンガになった。
様々な特殊能力を持った生徒たちが出てきて、戦いの中で彼ら自身の悩みを解決してく、という方向に転換することで、長期連載に成功した。

最近のバトルマンガは『HUNTERXHUNTER』にしろ、『ワンピース』にしろ、『ジョジョの奇妙な冒険』にしろ、ギミックありきで戦っている作品が主流になっている。
バトルマンガである以上、最終的には肉体言語に還元されていくわけだけれども、それでも、その過程において、キャラクターに即した「能力」を描写することで、キャラの内面をより深く掘り下げることができる。
『キン肉マン』とか『北斗の拳』とか、『あしたのジョー』、『六三四の剣』『リングにかけろ』『聖闘士星矢』『ドラゴンボール』・・・何でもいいんだけど、90年代以前の作品はわりと肉体言語の延長線上にある「必殺技」がキャラクターのアイデンティティを象徴し、ドラマ生を重視した手法で作品世界をつくっていたけれども、現在のように「キャラ」という概念がクローズアップされるような風潮になると、より特異な性格を求められるようになっているのだろう。
もちろん、今でも肉体言語の延長をやっている『ベルセルク』とか『クレイモア』とか『グラップラー刃牙』とか、いくらでも例外はあるんだけど、全体の流れとしてはそういうことなんだろうな、と思う。
キャラクター設定のテンプレートがより高度化しているのかもしれない。

で、『めだかボックス』でもそういったキャラの「能力」が作品のキーを占めているのだが、バトルマンガになってしまっているとはいえ、物語のスタートが「お悩み解決」であったというのはそれなりに大きな意味を持っていると思う。
「人間」の様々なヴァリエーションの可能性が能力としてデフォルメ、明確化された本作において、勝負の勝敗はそれほど重要なファクターではなくて、その能力、ひいては能力に結実しているその人物の人生を読み解いていくことが重要になっているのは、一応、テーマとして「お悩み解決」がいまだに貫通しているからだろう。
だから、負ける方はほんとに人間性を赤裸々に暴かれていくわけで、その過程がとても興味深い。
「人生」そのものを武器にしたバトルが展開されるので、真実を穿っているかのようにみえる「名言」が目白押し。
以下、抜粋


「不条理を、理不尽を、嘘泣きを、言い訳を、いかがわしさを、
インチキを、墜落を、混雑を、偽善を、偽悪を、不幸せを、
不都合を、免罪を、流れ弾を、見苦しさを、みっともなさを、
風評を、密告を、嫉妬を、差別を、裏切りを、虐待を、巻き添えを
二次被害を、いとしい恋人のように受け入れることだ。」

「『人生はプラスマイナスゼロだ』って言う奴は 決まってプラスの奴なんだ」

「世界は平凡か? 未来は退屈か? 現実は適当か? 安心しろ、それでも生きる事は劇的だ!」

「友達ができないままで友達ができるやつに勝ちたい」
「努力出来ないままで努力できるやつに勝ちたい」
「勝利できないままで勝利できるやつに勝ちたい」



こういうのが心に刺さるか刺さらないか、というのは結局受け手の問題になるわけだが、わりと感化される人は多いと思う。
私も何かしら胸を打つものを感じたしね。

そういう際立った「人間のありよう」「人間の可能性」をいろいろ見せてくれてはいるのだが、ただ、いささか強さのインフレならぬ、「人生のインフレ」を感じないでもない。
やはりリアリティとか整合性みたいなのから、少し離れているので、どうしても失笑してしまう瞬間というのがある。
それも受け手の好みの問題になっちゃうんだけど、これだけ多様な「人間の可能性のヴァリエーション」を見せられると、シリアスな展開も期待してしまうんだよね。
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